児童福祉と少年司法の狭間で苦しむ子ども達
「セックスワークサミット2017秋 」第3部レポート 第2回
動に携わる弁護士の安井飛鳥さんより、近年メディアなどで関心が高まっている「社会的
養護」の現状と、性風俗との関係について語っていただいた。「セックスワーク・サミット2017」第3部より。第1回〈「児童相談所」が抱える深刻なジレンマ〉に続く第2回。
子どもの支援関係者が頭を悩ませるキーワードとして、「虞犯」という言葉があります。これはいわゆる少年事件、少年法に関わる問題です。
少年法では、20歳に満たない者を「少年」と規定しています。用語としての『少年』なので、女の子でも男の子でも『少年』と言います。刑法と少年法の大きな違いは、刑罰を科すことが目的ではないということです。非行や犯罪をした少年に科すのは、あくまでその少年が立ち直り、同様のことを繰り返さないようにするための教育的な処分という意味合いになっています。
そのため刑法の場合は、刑罰を下す際には主にどのような犯罪行為をしたのかという行為部分に着目して判断するのですが、少年法の場合、窃盗や万引き、傷害といった非行・犯罪行為だけではなく、本人の性格や資質、家庭環境といった諸々の要素を加味して、最終的にどのような処分が相当かを判断していくことになります。
極端な話をすると、少年法の下では、100円の万引きをしただけでも、もしその子どもの家庭環境に問題があり、子ども本人の抱えている課題が大きいと判断されれば、少年院に行く可能性もあるということです。そんなこと机上の空論じゃないか、と思われるかもしれませんが、私は実際に100円単位の万引きで少年院送致となったケースに接したことがあります。
非行少年には、「犯罪少年」「触法少年(刑法で処罰できない14歳未満の少年)」そして「虞犯少年」の三類型があります。虞犯少年とは、「性格又は環境に照らして、罪を犯したり触法行為を犯す危険性のある少年」を指します。実際に犯罪はしていなくても、犯罪をしそうという理由で、鑑別所に入れられ、場合によっては少年院に行くこともありえるということです。少年法は、子どもを甘やかすだけの法律ではないか、と言われることもありますが、実際には刑法よりも広い範囲でパターナリズムに強制力が働く場面もあります。
そして児童福祉と少年司法の接点を考えるうえでは、この『虞犯少年』の理解が重要になってきます。もう少し具体的に言うと、福祉の支援には馴染まず、かといって少年犯罪という段階にまでは至らず、家出や深夜徘徊を繰り返して、危険な場所への出入りや非行グループと一緒に行動するなどしていて、いつ少年犯罪に巻き込まれるか分からない少年達についての理解です。
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「セックスワーク・サミット2017冬 「つながる風俗女子」+シンポジウム「みんなでつくる『適正風俗』」(主催:一般社団法人ホワイトハンズ)が、2017年12月3日(日)に、東京都渋谷区の国立オリンピック記念青少年総合センターにて開催されます。